日本の薬剤師の社会的地位や立場が欧米からみてまだまだ低いと聞いたら、現職の薬剤師の皆さんはどう思われるでしょうか?まず第一には給料などの待遇がかなり違うそうです。とくにアメリカの薬剤師たちが社会的にもっと高い地位にあることは、その平均年収が1,100万円というところからも分かるのです。日本の薬剤師の平均年収がこの10年あたり横ばいで500万円を行ったり来たりしています。この3年は上昇基調になってきましたが、平成25年度で533万円といいますからアメリカの平均年収の半額にも満たないのです。これはちょっと驚きでしょう。同じ仕事をしていても社会背景が違うとここまで差異が生じてしまうものなのです。
金銭的な面から単純に比べるのはナンセンスかもしれませんが、これをもってアメリカの薬剤師の良いところに目を向けることは、社会的なニーズが高まっている日本の薬剤師にとっても意味のある事であるはずです。アメリカでは薬剤師の社会的地位が医師や弁護士と同等であると言われています。これはとても高い評価に感じます。日本人では薬剤師の事を薬を調剤して服薬指導をする人と考えていますが、欧米ではもっとハイレベルな役目と責任を担っている職なのです。アメリカの薬剤師などは「薬剤師の仕事は、ただ単に薬を販売したり、患者さんの相談に乗ったりする事ではなく、薬物療法を通して人々の生活をサポートすることだ」ということをしっかりと自覚しているそうです。
この意識の違いを生む背景には、アメリカには国民皆保険制度がない事にあるかもしれません。病院で受診するためには高い保険に加入しなければならず、自己負担も高いので、そう簡単には病院には行けない現状があるのです。そのため治療を含む対処をドラッグストアなどの薬剤師に頼ることになるのです。ですから、アメリカでは患者さんがまず最初に医師ではなく、薬剤師の所に訪ねるそうです。アメリカの薬局は、ほとんど調剤薬局が併設されていて、 薬剤師はそのドラッグストアの責任者になっています。もちろん患者さんやお客さんの対応もしていますので、その責任は大きく、仕事の幅も広くなっています。これを見れば収入や待遇が高くなるのは当然かもしれません。
現在、日本の医薬関連企業にも変化がみられています。薬剤師の職務を重要と考え、給料や福利厚生を充実させている企業が増えているのです。海外のように日本の薬剤師業界も変革していく可能性がないとも言えません。より高いレベルの世界を薬剤師の方々がイメージして仕事に取り組むことは、今後のキャリアにとって良い益になるのではないでしょうか。